人造ネコ 第14回 タイトル未定

「…でねー。五十公野でまた戦ったんだよー。」
「まあ…ごめんなさいね、真亜子さん。私が倒れてしまっていなかったらご一緒したのに…。」
いーちゃんこなくてよかったよ。ほんとうに戦ったのはネコで、あたしはなにもしてねっし。」
「(間)…そうですの…。進んで戦いたいわけじゃあありませんけど、来なくてもいいといわれると少し複雑な気分ですわね…。」
「あー。ごめんね。そんなつもりじゃなかったんだけどー。」
「わかってますわよ。ちょっとスネたふりをしてみただけですわ…(間)。」
「むー。いーちゃんのいじわる。あ、それとねー。また新しい人造動物が見つかったんだよー。人造バッタン。」
「(間)…バッタ…ですの…。」
「そーだよー。真名子ちゃんが見つけたの。で、今は真名子ちゃんが飼ってるんだよ。」
「まあ…人造動物さんたちって全部でいくついるのかしら…。」
「いくつだろねぇー。わからねーね。」


真亜子と妹子は雑談をしながら校門をくぐろうとしたそのときだった。後ろから爆音がして生徒たちがみな後ろを振り向く。そして一様に(ああ、またか)という顔をした後、道の端に寄った。


「むー。来たねえー。」
「(間)…このエンジン音、そうですわね。」


やってきたのは真っ赤な車。ただし車輪はついていない。20世紀の終末に実用化された新世紀の乗り物「エヤカー」だ。エヤカーは浮上用と推進用の2基以上の反重力装置をエンジンで駆動して走行(というよりも飛行)する。超の上にさらに超と超がつく高級品であり、新シ写県での登録台数は両手の指で足りるといわれている。


エヤカーがどんどん真亜子たちの視界に近づいてくる。輝く跳ね馬のエンブレム。このエヤカーが友邦大イタリア王国の誇る自動車メーカー、ヘラーリの製品であることを表す紋章である。ヘラーリ1224。排気量12リッターの水冷V型24気筒エンジンを搭載し、最高速度は1,000kmを楽に越えるといわれているスーパーエヤカーである。そのスーパーエヤカーが姿を誇示するかのように、エンジン音を嫌味ったらしく爆発させながら自転車並みの速度で進んでくる。こんなものにこんな乗り方をするのは新發田ではあの家しかありえない。


「しゅーこさんとこのエヤカー、今日もやかまっしね。」
「…いつものことですから、馴れましたわ…。それにしても大蔵さん、運転手さんつきで送り迎えなんて、うらやましい…(間)。」
「…運転手さんだけじゃないよ。じゅうたんの人たちもついてるよ。むぅー。」