ふたりはプリキュア 又プラッシュ※又ター

 沈黙が2人を包み込む。最初にその沈黙を突き破ったのはキリヤであった。本を閉じ、ゆっくりと口を開く。

ごきげんよう、美墨、亮太君。」
「こんにちは、入澤先輩。」

 …僕のことをちゃんと覚えていたみたいだ。入澤キリヤ、多分僕の恋敵。くやしいけど結構カッコいい。それに、なんかよく分からない本を読んでる。岩波なんて読んだことないや。ほのかさんはそういうほうが好きなのかな。

「さて、亮太君に聞きたいことがある。」
「…何ですか、いきなり?」
「告白、だ。昨日君はほの…雪城先輩に告白すると言ったね。結果はどうなった。」

すごくストレートに聞いてくるな…。それにしても、昨日この人は『そのことをボクが知っている必要があると思えない』って言ってたじゃないか!昨日と今日で言ってることがまるで違う。なんなんだよう…。ほのかさんが僕になんて返事したのか、やっぱり気にしてるんじゃないか!

「気になりますか?やっぱり、ほのかさんのことが気になるんですね。」
「そうではなくて!…ほのかさんとは友だちだからな。友だちのことはやはり気になるんだ。それに、君だってボクの友だちのなぎささんの弟じゃないか。全くの他人とは言えない。だから、結果を知りたいと思ったのさ。」

 全くの屁理屈であった。しょせんキリヤも闇の住人、自分の感情を全て言葉の中にさらけ出していた。キリヤのほのかへの好意は確実に言葉の端々に現れている。沈黙を破ったのは確かに入澤キリヤであった。しかし、今や主導権を握っているのは美墨亮太の方であった。虹の園の住人に闇の住人が感情の話をしたところで、勝負にならないのだ。
さっきから入澤先輩、自爆しっぱなしだ。やっぱり入澤キリヤはほのかさんのことが好きなんだ。多分じゃなくて、この人は僕の恋敵なんだ。それにしても、この人はもしかしたら僕よりも不器用なんじゃないかな…。僕にもけっこう勝ち目があるのかもしれない!

「教えません。入澤先輩が自分でほのかさんに聞いてみたらいいじゃないですか。友だちなんですから。」

恋敵たちの最初の戦いは意外にも美墨亮太に軍配が上がった。押し黙って再び文庫本を開き始めた入澤キリヤを見て、美墨亮太はほんの少しの優越感に浸っていた。