ふたりはプリキュア 又プラッシュ※又ター

 お姉ちゃんの部屋には久しぶりに入れてもらったような気がする。お姉ちゃんは高校生になってから僕をあまり部屋には入れてくれなくなった。

「ちょっとそこ座っててー。お茶淹れてくる。」

あと、なんだかしおらしくなったというか…おんなっぽくなった?っていうのかな?とにかく、変わったような気がする。ほのかさんにお菓子の作り方を教えてもらったり、それに、淹れるお茶だって…

「…おいしい。」
「そう、よかった…。…あのさ、今日は、残念だったね…。」
「…うん…。」
「でも、亮太。亮太はまだほのかの返事を聞いてないんだから、あきらめちゃだめだよ。」
「え?」
「キリヤ君はね、今までちょっと遠いところに留学?していた、あたしとほのかの親友なの。ずっと音信不通だったけど…。それが今日、急に帰ってきた。いい、少なくとも、今現在、あの二人はずっと前に別れた親友のまま。それから先には進んでいないの。つまり…。」
「つまり…?」
「亮太とキリヤ君は、同じスタートラインに今立っているのよ。キリヤ君は…多分ほのかのことが好き…だと思う。ほのかも…そうかもしれない。でも、これからの努力次第で亮太がほのかをうんと引き寄せることだってできるはずなの。だから、絶対に最後まで、ほのかが他の誰かと付き合うまであきらめちゃ、だめだよ。」
「お姉ちゃん…。」
「好きな人がいたんだ。ひとつ上の、藤村先輩。ずっとあこがれてて、何度か一緒に遊びに行ったこともあったし、プレゼントを渡したこともあった。だけどね、どうしても本人に「好きです」って、伝えることができなかったんだ。そのうちに藤村先輩は同級生の人とラブラブになっちゃった…。どうして、どうしてあと少し、藤村先輩の前で好きですって言う勇気がなかったんだろうってすごい後悔した…ううん、今もしてる。だから、ほのかに告白しようとする亮太がすっごく偉く見えた。亮太、どーんと、当たって砕けようよ。絶対に後悔の残る恋なんかしちゃだめだよ。」
「ありがとう、お姉ちゃん。僕、頑張ってみる。…でもお姉ちゃん、砕けちゃうのかよ僕の恋は。」
「え、あ、うん、あははは…ごめーん、亮太。ほらー、とっときのおせんべいあげるからー、許してー。」

 お姉ちゃんが失恋していたなんて話ははじめて聞いた。確かにそう言われてみると少し前、元気のない顔で帰ってきた日が何日かあったような気がする。お姉ちゃんが泣いているのに僕は気がついてあげられなかったのに、お姉ちゃんは泣いている僕に、話すのもつらいはずの失恋話までして勇気づけてくれた。僕は、もう泣かない。勇気を出すんだ。